2026.02.18 業界動向

セルフチェックで「いいえ」が1つでもあったら確認したい、決済が見えなくなる構造

ECの決済は、なぜ「よく分からないまま」運用されてしまうのか

前回の記事では、ECの売上に静かに影響を与えている「見えない決済ロス」と、その有無を確認するためのセルフチェック10項目を紹介しました。実際にチェックをしてみて、「いいえ」がいくつか当てはまった、という方も少なくないかもしれません。

 

ただ、ここで誤解してほしくない点があります。「いいえ」があったからといって、何かが足りていない、あるいは対応が遅れている、という話ではありません。日々の運営の中で、決済に違和感を覚える場面はあっても、「どこで何が起きているのか」を確かめる手段がなければ、判断のしようがありません。その結果、気づいてはいるものの、どう動けばいいのか分からない、という状態に陥りがちです。

 

本記事では、なぜこのような状態に陥りやすいのかを、担当者個人の問題ではなく、多くのECで共通して起きている「構造」の視点から整理していきます。

決済が「見えないまま」運用されてしまう理由

セルフチェックで「いいえ」がついた項目は、担当者の努力不足や理解不足が原因ではありません。多くの場合、その背景には、そもそも把握できるように設計されていない構造があります。決済に関する問題が見えにくく、判断しづらくなっている理由を、代表的な3つの構造から整理します。

①決済が「結果」しか見えない設計になっている

多くのECで確認できるのは、「決済が成功したか、失敗したか」「売上が立ったか、立たなかったか」といった最終結果のみです。確かに結果は重要ですが、これだけでは「なぜ失敗したのか」「どこでユーザーが離脱したのか」は分かりません。承認までは進んだのか、3Dセキュアで止まったのか、不正判定でブロックされたのか。こうした途中経過が見えないまま、結果だけが残るため、原因の特定や改善の検討ができない状態になります。その結果、「決済はブラックボックス」という認識が生まれやすくなります。

②必要なデータが分断されている

決済に関わる情報は、PSP(決済代行会社)、不正検知ツール、3Dセキュア、EC基盤など、複数のシステムに分かれて存在しています。本来であれば、これらを横断的に見なければ「何が起きているのか」は判断できません。しかし現実には、それぞれが別の管理画面、別の担当領域として切り分けられており、誰か一人が全体を通して確認できる状態になっていないケースがほとんどです。部分的な数字は見えても、全体像が見えない。そのため、「怪しい気はするが、断定できない」「どこを直せばいいのか分からない」という状況に陥ります。

③改善の前後比較ができない

不正検知ルールを変更したり、3Dセキュアの設定を見直したりと、現場ではさまざまな調整が行われています。しかし、その結果として「どれだけ良くなったのか」「どれだけ悪影響が出たのか」を、同じ指標・同じ条件で比較できているケースは多くありません。前後で見る指標が違ったり、期間や条件が揃っていなかったりすると、結局は感覚で判断するしかなくなります。その積み重ねが、「下手に触ると怖い」「現状維持が無難」という空気を生み、改善の意思決定を止めてしまいます。

決済に関するセルフチェックで「いいえ」が出やすいのは、担当者個人の問題ではなく、こうした構造的な制約が背景にあります。多くのECでは、決済に大きなトラブルが起きていない限り、「とりあえず回っている」という感覚のまま運用が続きがちです。その一方で、売上に直結する判断が、理由の分からないまま先送りされている状態が当たり前になっています。

不正対策を強めれば売上への影響が気になり、緩めればリスクが怖い。検証できる材料がないため、「現状維持」が最も安全な選択肢として選ばれていきます。こうして、「触らないこと」が合理的な判断として定着していきます。

この状態が続くと、決済は「よく分からない専門領域」として扱われ、問題が顕在化したときにだけ向き合うものになります。本来は平常時に判断できていれば防げたはずのロスも、後追いの対応になってしまいます。

 

次章では、対策やノウハウの前に整えるべき「判断できる状態」とは何かを整理していきます。

決済環境を「判断できる状態」とは

決済環境を判断できる状態とは、決済に関するすべてを完璧に理解している状態を指すわけではありません。意思決定に必要な最低限の問いに、根拠を持って答えられるかどうかです。たとえば、「今の決済状態は健全なのか」「どこでロスが発生していそうなのか」「何かを変えた結果、良くなったのか悪くなったのか」。こうした問いに対して、感覚や印象ではなく、共通の数字や指標で会話できる状態。それが「判断できる状態」です。

 

では、判断できる状態かどうかは、どこを見れば分かるのでしょうか。その目安になるのが、前回紹介したセルフチェックです。以下の表では、セルフチェックの各項目について、「いいえ」となった場合に何が見えていないのか、そしてその状態を放置すると何が起きやすいのかを整理しています。セルフチェックでの診断結果をもとに、見るべき項目を把握しましょう。

セルフチェック項目 「いいえ」の場合、何が見えていないか放置すると現場で起きやすいこと
❶ 3Dセキュアの導入・設定変更前後で、決済承認率や離脱率を比較している「セキュリティ強化によって、売上がどう変わったのか」という因果関係CVRの低下(=売上の低下)に気づかず、 「安全になったからOK」と判断してしまう
❷ PSP(決済代行会社)の変更や設定変更前後で、売上・承認率の差分を説明できるPSP変更・設定変更が、承認率や売上にどう影響したかPSP選定・切替の判断が、価格や印象ベースになる
❸ 最新のセキュリティガイドラインの要件と更新内容を理解し、自社の対応状況を説明できる自社が「ガイドラインのどこまで対応しているか」という現在地セキュリティ対応が「念のため」ベースになり、過剰対応・不足対応のどちらにも陥りやすい
❹ カード会社(イシュア)別の承認率を、定点的(日次・週次・月次など)に把握しているどのカード会社で、どれくらい決済ロスが発生しているのか全体数字だけを見て、改善の優先順位を誤る
❺ 決済エラーの理由を、エラーコードだけでなく事象で説明できるユーザー視点で、なぜ決済が完了しなかったのか原因不明のまま「離脱したなら仕方ない」「カード会社判定だから仕方ない」として放置してしまう
❻ 「今の決済状態は健全か?」と聞かれて、即答できる指標がある今の決済状態が、良いのか悪いのかの判断基準決済に関する意思決定が後手に回る
❼ 決済エラー後の再購入率・再決済成功率を把握している決済エラー後に、どれくらい売上を回収できているか回収できる売上を失注として扱ってしまう
❽ 「不正を防いだ件数」だけでなく、防ぎすぎた可能性を確認できている不正対策によって、本来通るはずの取引を止めていないか不正対策が売上を削っていることに気づけない
❾ 不正検知ルールや判定条件を変更する際、売上影響を事前に仮説立てしている不正検知ルール変更が売上に与える影響の見込み「念のため」の強化で、売上を落としてしまう
❿ 決済に関する問題を、感覚ではなくデータで議論できている決済の問題を説明・判断するための共通データや共通言語説明できず、決済がブラックボックス化する

対策より先に考えるべき、決済の土台

決済に課題がありそうだと感じたとき、多くのEC事業者はすぐに「何か対策を打たなければ」と考えます。不正検知ルールを強化するべきか、3Dセキュアの設定を見直すべきか、あるいはPSPの切り替えを検討するべきか。選択肢はいくつもあります。しかし、その前に立ち止まって考えるべきことがあります。

まずやるべきことは、対策を打つことではありません。「決済の状態を、継続的に把握できる土台をつくること」です。最低限、次のような状態を継続的に確認できることが重要です。

  • 決済承認率が、いつ・どの要因で変化しているのか 
  • 決済エラーが、どの種類でどれくらい発生しているのか 
  • ルール変更や設定変更の前後で、何がどう変わったのか 

これらが揃うだけで、決済に対する意思決定の質は大きく変わります。「なんとなく不安だから」「念のため強化しておこう」といった感覚的な判断から、「この影響なら許容できる」「ここは改善余地が大きい」といった、理由を説明できる判断へと変わっていきます。

YTGuardは、ここまで述べてきた「決済の状態を判断できるようにする」という考え方を、そのまま形にしたサービスです。特定の対策を押し付けるのではなく、まず決済まわりで何が起きているのかを整理し、誰でも同じ前提で判断できる状態をつくることを目的としています。

決済データを自動で集約・分類し、「なぜ支払いが失敗しているのか」「どこでつまずいているのか」を分かりやすく可視化します。専門的な知識がなくても、承認率の変化やエラーの内訳、カード会社ごとの傾向などを一つの画面で把握できるよう設計されています。セルフチェックで「いいえ」があった方にとって、まず整えるべき環境として、この考え方を支える一つの選択肢がYTGuardです。

 

「今の決済状態を説明できるか」「変化があったとき、その理由を判断できるか」。この問いに自信を持って答えられるかどうかが、これからのEC運営では大きな差になります。まずは、いま自社の決済で何が起きているのかを、正しく知るところから始めてみませんか。

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