CVRは「流入数」と「決済承認率」で決まる。購入直前の離脱を防ぎ、CACを削減する方法
CVRやCACを改善するために見落としがちな「決済承認率」を解説
ECサイトの成果を左右する指標として、CVR(転換率/コンバージョンレート)やCAC(顧客獲得コスト)は非常に重要です。多くのEC事業者が、UI/UXの最適化、LPO、EFO、ABテスト、レビュー提示、レコメンドやパーソナライズ、SEO強化、リテンション施策など、わずか0.1%の改善でも積み重ねる努力を行っていることでしょう。
しかし、サイト上での商取引の出口にあたる「決済」に目を向けると、意外と取り組みが後回しになっているケースが少なくありません。本記事では、決済承認率がCVRやCACにどのように影響を与えるのかを整理し、その重要性と改善のポイントを解説します。
CVRの構成要素とは?
CVRは、サイトを訪れたユーザーのうち、実際に成果(購入・申込など)に至った割合を示す重要なKPIです。従来、CVRの改善は広告やマーケティング施策による「流入数」に焦点が当てられてきました。しかし、広告による流入だけではCVRの全体像を把握することはできません。ここに新たに注目すべき要素が「決済承認率」です。
これまでCVRを分解して考える際は、主にデザイン・広告・LP・システムなどのマーケティング要因が中心でした。しかし、決済承認率という新たな概念が登場したことで、CVRは「マーケティング要因」と「決済承認率要因」という2つの構成軸で分析しなくてはならなくなっています。これにより、マーケティング責任者がモニタリングすべき範囲は明確に拡張しています。つまり、CVRの変動要因が増え、UI/UXや広告施策だけではなく「決済プロセス」までを含めた全体最適が求められる時代に入ったと言えます。
- 広告やマーケティング施策からの流入
CVRの第一の要素は、広告やマーケティング施策によってサイトに訪れるユーザーの数です。ターゲティング精度や訴求内容によって流入構成が変わり、流入数が増えてもコアターゲット以外が増えるとCVRはむしろ低下する場合もあります。そのため、CVRとアクセス数のバランスを見ながら、成果を最大化するポイントに調整していくことが重要です。しかし、ここだけに注力しても、最終的な購入完了までの成果は保証されません。
- 決済承認率
「決済承認率」とは、ユーザーがカートに商品を入れ、購入ボタンを押した後に、実際に決済が成功する割合を指します。この承認率が低いほど、購入直前で「決済落ち」による離脱が発生しやすくなります。せっかく広告でサイトに誘導しても、この段階で多くの見込み顧客を取りこぼしてしまうのです。
CVRは「広告・マーケティングによる流入数」と「決済承認率」の掛け算で表すことができます。
CVR=流入数 × 申込・購入数 × 決済承認率
広告流入が同じであっても、決済承認率を改善することでCVRは直接的に向上します。逆に、承認率が低い状態では、どれだけ広告に投資しても成果は伸びません。つまり、「集客」と「決済」の両輪を回してこそ、真のCVR改善が実現するのです。
カゴ落ちの先にある「決済落ち」に注意
特に注意すべきは、購入直前のプロセスです。ユーザーがカートに商品を入れ、購入ボタンを押したにもかかわらず、承認率の低さによって購入が完了しないケース(いわゆる「決済落ち」)は珍しくありません。この「最後の数クリック」での離脱は、広告やマーケティング施策で獲得した見込み顧客を無駄にしてしまう、非常に大きな損失につながります。
例えば、1万人の訪問者があったとしても、実際にカートに商品を入れ、決済ボタンを押す段階まで進むのはごく一部です。仮にカートイン後にカゴ落ちせずに500人が決済を実行し、そのうち400人が購入完了に至ったとします。この場合、決済承認率は80%であり、残りの20%(100人)は購入直前で離脱(決済落ち)してしまったことになります。つまり、承認率20ポイントの改善が、CVRを1ポイント押し上げたという関係になります。この「購入意欲が高いユーザー」を取りこぼすことは、売上機会の損失だけでなく、広告投資の効率(ROI)低下にも直結します。
承認率の改善は、CVRの向上だけでなく、CACの削減にもつながります。実際に、決済承認率の改善だけでCVRが1%以上上昇し、CACが10〜20%改善した事例もあります。
つまり、最も重要なのは「購入意欲が高く、カートに商品を入れて決済を実行しようとしているユーザー」を確実に購入完了へ導くことです。この最後の一押しを支えるのが、まさに「決済承認率」の改善であり、CVR・CACの双方における本質的な改善ポイントと言えます。
3Dセキュア導入後に見える承認率の変化と課題
多くのEC事業者は、「決済ボタンを押せば必ず承認される」と考えがちですが、実際には決済承認率は100%ではありません。特に、2025年3月以降に義務化された本人認証の仕組み「3Dセキュア」の導入により、セキュリティは向上した一方で、承認率が下がりやすくなっています。
ここで、YTGATEの蓄積データをもとに、3Dセキュア導入前後の決済承認率の変化を平均値で比較した実例をご紹介します。導入前、複数のカード会社では承認率はおおむね90%程度で、安定して高い承認率を記録していました。しかし、3Dセキュアを導入した後には、カード会社ごとに大きな差が生じ、承認率が50〜60%まで低下するケースも見られました。一方で、依然として90%を維持しているカード会社もあり、承認率のばらつきが顕著に表れています。
決済承認率が下がる原因は、大きく 「ユーザー起因」 と 「カード会社起因」 の2つに分けられます。
- ユーザー起因
ユーザーが3Dセキュアの操作方法を理解していなかったり、ワンタイムパスワードを入力し損ねるケースがあります。また、「知らない画面に遷移した不安」や「時間切れ」「SMSが届かない」といった要因で離脱してしまうこともあります。これらはシステム上の不具合ではなく、UX(体験設計)や説明不足による心理的離脱が主な原因です。 - カード会社起因
新規利用枠の不足、過去の利用履歴、不正リスクなどを総合的に判断した結果、正当な取引でも承認NGとなるケースがあります。この防御的否認によって、意図せず正規ユーザーの取引が阻害されることがあります。こうしたロジック変更や判定強化はカード会社側で行われるため、加盟店には通知されず、知らないうちに承認率が低下しているケースも少なくありません。気づきにくい要因の多くは、まさにこのカード会社起因のものです。
決済承認率は、消費者が購入ボタンを押した直後の瞬間に、決済代行会社を経由してカード会社が「承認するか否か」を判断することで決まります。この承認が得られなければ、ユーザーは「支払いできない」=「購入できない」状態となり、知らないうちにCVRが下がり、CACが上昇してしまいます。
したがって、CVRやCACの改善には、広告やサイトUI/UXの最適化だけでなく、決済プロセスそのものの承認率を最適化することが不可欠です。承認率を高めることで、購入直前の離脱を防ぎ、より少ない広告費でコンバージョンを増やす=ROI(投資対効果)の最大化につながります。
CVR向上のための実践ステップ
CVRやCACを改善し、売上を最大化するためには、購入直前でのユーザー離脱を防ぐことが不可欠です。ここでは、具体的な改善ステップを3つご紹介します。
ステップ1:健康診断で現状把握
まずは自社の決済承認率や成功率を正確に把握することが重要です。YTGuardなどのツールを活用することで、簡単にデータを可視化できます。
- 全体の取引のうち、実際に決済が完了している割合を確認し、全体傾向を把握します。
- 金額帯や商品カテゴリ、デバイスなどの条件ごとに失敗傾向を分析します。
- 同じユーザー層でもカードブランドや発行会社によって承認率が異なるため、原因を分解することで、ユーザー由来の要因とカード会社由来の要因の比率を明らかにします。
こうした情報を把握することで、どの部分でユーザーが離脱しているかを明確にできます。現状を知らずに改善施策を講じることは困難であり、まずは正確な健康診断から始めることが、CVR改善への第一歩です。
ステップ2:カゴ落ち防止・リカバリー施策
次に、購入直前で離脱しそうなユーザーを救う仕組みを整えましょう。 特に3Dセキュア導入後は、操作ステップが増えたことで、ユーザーの入力ミスや混乱による決済エラーが発生しやすくなっています。YTGuardでは、こうしたケースに対し、決済エラーの原因に応じた適切な案内を「本人にだけ」表示する独自機能を提供しています。たとえばセキュリティコードの入力ミスであれば、再入力を促すポップアップを表示し、ユーザーが安心して再挑戦できるようサポートします。これにより、「もう一度やってみよう」と思える導線を生み出し、離脱を最小限に抑えることが可能です。
なお、YTGuardのカゴ落ち防止サービスでは、不正検知機能を必ず通過させたうえでリカバリー施策を行うため、不正ユーザーを自動的に排除し、真正ユーザーのみに対してリカバリー文言を安全に表示しています。さらに、導入コストも低く、タグ埋め込みや一部設定のみで稼働できる点も大きな特徴です。ISO 27001やPCI DSSなどの国際基準にも準拠しており、セキュリティ面でも安心して運用できます。
ステップ3:カード会社との連携による承認率向上
最後に、承認率の低下がカード会社起因の場合は、カード会社との連携・調整が重要です。不正利用を防ぐための保守的な承認設定やAI審査が、正当なユーザーの取引まで拒否しているケースも少なくありません。ここのような場合、カード会社とコミュニケーションを取りながら、「どの取引条件で正当な購入がブロックされているか」を明確化し、真正ユーザーがスムーズに承認される環境を整備することが重要です。 YTGuardでは、伴走型の支援を通じてカード会社との対話を通じた承認率向上を実現しています。
購入直前でのユーザー離脱を放置すると、購入意欲の高いユーザーを目の前で失ってしまいます。しかし、上記3ステップを実践することで、広告やデザイン、導線といったマーケティング要因を変えなくても、 CVRを底上げし、より効率的に売上を伸ばすことが可能です。決済承認率の改善は、広告やマーケティング以上にCVRとROIを左右する経営課題です。まずは自社の現状を“見える化”することから始めてみませんか?
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